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『ボヘミアン・ラプソティ』がクイーンを知らない世代まで魅了するワケ [映画]

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1970年代の曲が再ブレーク
「ボヘミアン・ラプソディ」、「マンマ・ミーア! ヒア・ウィー・ゴー」、「アリー/スター誕生」――。それぞれクイーン、アバ、バーブラ・ストライサンドと、1970年代に活躍していたアーティストの作品の“衣替え”が行われた作品ですが、世界的にもまずまずの興行収入でした。
ヒットの理由に共通するものがあるのでしょうか。ここで検証してみたいと思います。

1970年代アーティスト作品をモチーフにした映画が世界的にヒット。時代を超えて好かれる理由はどこにあるのでしょうか? 

予想を上回るヒット『ボヘミアン・ラプソティ』
予想を上回る大ヒットとなったクイーンの自伝的映画「ボヘミアン・ラプソディ」と、アバの活動再開も話題になったミュージカル映画「マンマ・ミーア! ヒア・ウィー・ゴー」。このタイトルとなっている2曲には因縁があることをご存じでしょうか?
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今からさかのぼること43年前の1975年11月、イギリスでクイーンの「ボヘミアン・ラプソディ」がリリースされた。シングル・チャート17位に初登場すると、わずか3週でNo.1を獲得。そこから年をまたいで1976年1月24日付まで9週間連続第1位の大ヒットとなりました。

10週連続1位は惜しくも実現しなかったのだが、それを阻止したのが、スウェーデン出身のアバの「マンマ・ミーア」だったのです。
当時のアバは1974年の「ユーロヴィジョン・ソング・コンテスト」で優勝し、ヨーロッパでは有名だったが、イギリスでは「ワン・ヒット・ワンダー(一発屋)」の印象が強かったのです。
世界的大ヒット曲「ダンシング・クイーン」がリリースされる前ということもあり、日本でもほとんど知られていなかった時期でした。

この2曲のNo.1リレーが43年の時を経て映画に舞台を移し、世界中で次世代のファンを獲得していくとは、当時は誰も想像しなかったことでしょう。

「ボヘミアン・ラプソディ」は日本公開9週目で興行収入84億円を突破。2018年公開の洋画では「ジュラシック・ワールド/炎の王国」を抜いて第1位となり、100億円突破も視野に入ってきました。また先日発表されたゴールデングローブ賞の映画部門で作品賞と主演男優賞を受賞。全世界では約817億円の興行収入を記録しています。

アバ、クイーン、カーペンターズに共通するロングヒットの理由
また日本ではCD売り上げにも加速がつき、サントラ盤「ボヘミアン・ラプソディ」、ベスト盤「グレイテスト・ヒッツ」、日本編集ベスト「ジュエルズ」の3枚がデイリー・チャートにおいて同時にトップ10に入りました。
これは日本のアーティストでもありえない現象で、「CDからライブへ」という通常の流れと違い、「映画からCDへ」と、逆流現象が起こっている状況です。

映画に出てきた「ウィー・ウィル・ロック・ユー」のレコーディング・シーンのように、小学生が学校でリズムに合わせて足踏みをしていると聞くと、もはや第2世代ではなく、第3世代にまでファンは広がっているようです。

一方の「マンマ・ミーア! ヒア・ウィー・ゴー」は、2008年に第1作が公開された。今回は第2弾なのだが、アバの35年ぶりの活動再開もあって、世界中で大ヒットを記録。こちらは2作目であるにもかかわらず、全世界では約433億円の興行収入を上げています。

当時、リアルタイムでアバの宣伝を担当していた、音楽プロデューサーの宮治淳一氏の話・・

「アバは当時小学生たちが初めて聴いた洋楽だったんですね。電話での問い合わせなんかもよくありました。今とは違って世界全体が成長期でもあったので、アバの曲には高揚感、無前提の明るさがありました。いわゆる流行歌、ヒットソングですから10年後に聴かれるかどうかなんて考えて作ってはいない。それでも時代の風雪に耐えて今でも残っている曲がいくつかあって、アバ、クイーン、カーペンターズなどの70年代の曲は強いですね」

確かに70年代の洋楽アーティストの有名なヒット曲はキャッチーでわかりやすく、キラキラしているイメージが残っています。そういった曲は今まさに、時代に似合う服に着替えをして、次世代の人々の前に現れているのかもしれませんね。

70年代の曲が使われている映画がヒットしている理由
「ボヘミアン・ラプソディ」「マンマ・ミーア! ヒア・ウィー・ゴー」には大きく分けて3つのヒットの理由があると分析されています。

1)「ベストアルバム的鑑賞」ができる
クイーンもアバもシングルヒット曲が多いアーティストで、何より知っている曲が多い。映画で流れる曲は、日本でもテレビドラマ、バラエティー、スポーツ中継、CMなどで耳にしたことがある曲が多く、映画を見ながら、まるで「ベストアルバム」を聴いているような楽しさがあります。

2)「2世代にわたる鑑賞」が可能
これまで70年代の音楽をリアルタイムで体験してきた親の世代は、当時の彼らの音楽の素晴らしさを伝える機会がありませんでした「マンマ・ミーア!」シリーズは「母と娘」を主人公にしており、文字通り2世代が楽しめる内容です。「ボヘミアン・ラプソディ」も親子で共有できる作品としての役割を果たしています。どちらの映画も単なる音楽の良さを伝えるだけではなく、物語としても感動を共有することができ、場合によっては3世代にわたっての鑑賞も可能なのです。

3)「参加型、体感型の鑑賞」が可能になった
大型ショッピング・センターに併設したシネコンが増えたことで、家族連れも増え、劇場の設備も進化してさまざまな楽しみ方が可能になりました。音楽映画の場合、まるでライブに参加しているかのようにサイリウムやペンライトを持ち込んで歌ったり、迫力のあるサウンドで楽しむことができます。

ストーリー映画だと1回見れば十分だが、音楽映画だと曲に飽きることがなく、何回でも体験したくなるし、また見るたびに発見があり、違った感動を味わうこともできます。「ボヘミアン・ラプソディ」にリピーターが多いのは、「フェス世代」がクイーンのライブを追体験できることも大きいです。そして「親から子」への「縦軸」から、「知人・友人」への横軸へと、SNSを使って広がっていった背景もあることが伺えます。

レディー・ガガ「アリー/スター誕生」での70年代オマージュ
もう一つ、70年代のオマージュ的な音楽映画が、現在公開中のレディー・ガガ、ブラッドリ
ー・クーパー主演による「アリー/スター誕生(原題:A Star is born)」。

この映画は4度目となるリメイクで、前回は1976年にバーブラ・ストライサンドが主演した。当時はバーブラの絶頂期で、自らがエグゼクティブ・プロデューサーも務めており、主題歌「スター誕生の愛のテーマ」が全米シングル・チャートで1位、グラミー賞では「ソング・オブ・ジ・イヤー」に輝きました。また、サウンド・トラック盤も全米1位、400万枚の売り上げを記録しています。
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今回の「アリー/スター誕生」を見たバーブラは「すごく良かったわ、映画も彼女も素晴らしかった」とインタビューで述べている。レディー・ガガとブラッドリー・クーパーの歌う「シャロウ~『アリー/スター誕生』愛のうた」は、イギリス・シングルチャートで1位、アメリカで5位。サントラ盤は英米どちらも1位に輝いており、前作と比べても全く遜色ない数字です。

また、先日のゴールデングローブ賞では映画部門で主題歌賞を受賞し、プレゼンターのテイラー・スウィフトから祝福されました。これまでの全世界での興行収入は約438億円(1ドル110円:1月7日現在Mojo Box Officeによる)。まだまだ増えそうな勢いです。

バーブラ版とレディー・ガガ版の2つの「スター誕生」を比較してみると、前作からバトンを受け継いでいるセリフやシーンが幾つか見られます。ネタばらしになってしまうので具体的に挙げることはしませんが、ぜひ、両作品を見て探してみることを勧目ます。
どちらも音楽の素晴らしさはもちろんだが、トップ・スターが抱える「名声と嫉妬」、「成功と不安」、「愛と憎しみ」など、華やかな舞台とは異なる心の葛藤が共通して描かれています。
それは時代背景が変わっても全く変わらないものだったのです。

キャロル・キング「つづれおり」がアリーの部屋の壁に
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主人公アリー(レディー・ガガ)の部屋の壁には70年代を代表する名盤、キャロル・キングの「つづれおり」のジャケットが飾られています。このアルバムは1971年にリリースされ、アメリカでは15週連続1位、全世界で2500万枚売れたアルバムであり、スタンダードとなっている曲も多く収録されています。

実際にレディー・ガガは2014年1月に行われたキャロル・キングのトリビュート・コンサートで、アルバム収録曲「You’ve got a friend」をパフォーマンスしています。このことからも主役のアリー(レディー・ガガ)のスピリットとして、このアルバム・ジャケットを登場させたのは間違いないでしょう。
「このアルバムをバイブルにしている邦楽の女性シンガー・ソングライターは、プロでもアマチュアでも多いですね。今でもライブハウスなどで洋楽カバーとしてこの曲を弾き語りで聴く機会は多いです。シンプルながらも奥が深いので、パフォーマンスをすればそのアーティストの実力がわかってしまう曲ですから、よほど表現力に自信がないと取り上げない曲ですね」(音楽プロデューサー大越王夫氏)

たとえAIが曲をつくる時代になったとしても、人間同士の感情の摩擦に耐え、苦難を乗り越えて出来上がった曲は、聴く人の胸に響くことに変わりはないでしょう。
これら3つの音楽映画はジャンルこそ異なるが、どれも時代の「高揚感」が表現されています。これらの作品に負けない日本製の音楽映画もぜひ、見てみたいものです。



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